スポーツや武道,料理などを学ぶ上で,基礎を学ぶ重要性は広く知られています.しかし,(広義の)デザインの話になると「そんなの当たり前にやっている」みたいな話が,しばしば出てきます.これには大きな違和感を覚えます.

例えば,「料理のさしすせそを正しく覚えましょう」という話をしているときに「調味料を入れるぐらい誰でもやる」と答えるような,そんなちぐはぐな感じがあります.なぜ,デザインになるとそういった勘違いがおきるのでしょう.これはデザインに関する基礎知識が足りておらず,その価値を軽視しているためです.

また,自分たちは知識がないから,プロとやればいい,という話もあります.詳しいプロに任せるという選択肢は確かにあります.しかし,任せるにしても基礎知識は必要です.任せる価値がわかっている,任せる内容を適切に伝えられる,任せた結果をある程度は評価できる,といったことです.それらができないと,過度に安い/高い価格でお願いしてしまったり,結果がひどいことになったりします.よくあるのは,プロの選び方・任せ方が悪かったのに「デザインは意味がなかった」と責任転嫁するケースです.

料理であれば毎日食べるものなので,誰しも基礎は自然とできます.しかし,デザインは意識して触れなければ,そういった基礎は手に入りません.そのため,組織として基礎知識を持つには,研修や日々の業務プロセスに取り込まれていることが必要です.

デザインは,利用者にとって魅力的なモノ・コトを生み出すうえでとても重要で,企業として自然に取り入れられるべき考え方です.しかし,組織として上手く活用するには「できる人がやる」とか「できる人に任せる」というだけでは足りません.それでは,(一部の人が)デザインを活用しているのに,組織としてその効果を享受できない(無意識に捨てている)というもったいないことになります.自分たちがデザインのプロにならないとしても,組織としてデザインの基礎知識を持ち,適切に任せられるようにしていくことが重要です.