IDEOのトム・ケリー曰く,日本人はクリエイティブな人種であるにも関わらず,上手く発揮できていないそうです.日本はクリエイティブな国で,人々もクリエイティブにもかかわらず,クリエイティブを発揮することを躊躇してしまう,変なヤツと思われたり,違うと思われたくないという気持ちが,勢いを無くしてしまうといいます.なので,まず手を挙げられる状態を作ること.上の人がクリエイティブを発揮するための行動を評価できることが大事だと指摘します.この記事では,そういった状態になるために重要な二つの要素について紹介します.
1.Balance Technology with Humanity
まずは共感から始めることがとても大事である.共感したことに対して,テクノロジーを使うことを考えることが重要である.共感こそがDesign Thinkingの中核を担うものである.
共感からスタートして成功した有名な例として,GEのMRIが挙げられる.MRIを作っていたDougというエンジニアのエピソードである.彼は人間性を考えずに,技術のことばかり考えてMRIを作っていたことに気がつく.あるとき子供がMRIをとても怖がる様子を目撃したのである.彼は,子供はなんでそんな恐れているのか,始めは理解できなかった.MRIの検査技師に聞いてみると,「君のシステムは凄く怖がらせる.80%は麻酔を掛けないと検査を受けられないよ」と,事実を知らされた.それは,Dougにとってすさまじいショックだった.
その後,彼はd.schoolに通い,ユーザーに共感することの重要性を学んだ.MRIのユーザーである子供に深く共感することによって,Dougは良いアイデアを思いついた.とても良いアイディアだったので,それを興奮して上司に話をしたのだがでも予算は付かなかった.しかし,強い共感をしていたDougはあきらめずに,ボランティアを募ってプロジェクトを進めた.
彼は何をしたか?というと,検査機の外装をディズニーランドのアトラクションみたいにデザインしなおしたのだった.その結果,子供はまるで冒険をするかのように検査を楽しんでくれるようになった.嫌がる子供はなんと10%以下に減った!これによって,非常に効率良く検査を行えるようになった.これは企業にとっての評価基準にも合致していたという.
ほとんど開発費をかけることもなく,驚異的な結果を生み出したのである.彼は共感から初めて,ユーザーのニーズに応えるだけでなく,企業としても素晴らしい成功を収めることができたのである.
2.Treat Life as an Experiment
人生は実験と捉えることがとても重要である.失敗することが当然と思えるようになれば,失敗を恐れる必要などない.誰しも最初は下手なのはあたりまえ.下手な頃を乗り越えなければ上手くは成らない.誰にとっても失敗は嬉しくないが,失敗は成長のプロセスなので,当然だと思って受け入れよう.
例えば,日本で大ヒットしているDysonの掃除機.実はこの掃除機は,5127のプロトタイプ(試作品)のうえに成りたっている.開発者であるDysonは,一つ一つプロトタイプを積み重ね,失敗から学び,改善を続けることで成功した.このように,実験をすればするほど,成功する確率は上がっている.だからこそ,できる限り早く,そして,できるだけ安く実験をすることが重要.
そのためには,安く,時間内に,目的を達成できるプロトタイピングのやり方を考えることが重要.目的によって作るべきプロトタイプは変わってくるので,注意が必要.目的を考えて,作るべきプロトタイプを定めることこそが「実験の核」となってくる.誰しも意識してやってみるとよい.
まとめ
IDEOのトム・ケリーが述べた,日本人がクリエイティブを発揮するために重要なことは「共感から始める技術」と「人生を実験として捉える」の二つです.特に,経営層は,社員がこれらをできる環境を整えるべきだと彼は指摘しています.
※なお,本記事は経産省・Connect!主催「新事業創造カンファレンス&Connect!」・「日本ベンチャー大賞表彰式」で行われた基調講演をもとに作成されています.
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