椅子と机とパソコンがあればどこでも作業ができるだろう、なんでわざわざ金を掛けてまで場をデザインするのか、そういうことをいう管理職は多い。しかし、良い仕事がしたいなら場にはこだわったほうが良い。

「教室の設計が成績に影響」を実証 « WIRED.jp

場には力がある

上記の研究では、教室の設計が成績に影響していることを示している。つまり、場の作り方によって人の能力が左右されているといえる。また、場所は成績だけではなく様々な効果をあげる。

例えば、壁を取り払ったオープンスペース型の教室を採用した学校(例:八王子市立みなみ野小中学校)は、死角が少なくなり、いじめなどが減らせると言われている。さらには、幼稚園の屋上に遊び場を作ることで、限られたスペースを活かして、子供が楽しく過ごせ、さらに交流が自然と起きやすい環境を作りあげている例もある(ふじ幼稚園)。このように、教育機関だけでも、ここまで特色を出す時代が訪れている。加えて企業においても、富士ゼロックスのフューチャーセンタなど、議論を円滑に進めるための、専用の場を用意する企業が出てきている(フューチャーセンタ) 。

もちろん、このような工夫が全てが有効に働くわけではないし、その効果を定量的に確実に測ることは難しいことなのだが、場所を工夫することに効果があるという認識が強くなってきていることがわかる。

多くの人は場の力に左右される

もちろん、「弘法筆を選ばず」というように、場所や道具、チームなどに左右されずにハイパフォーマンスを発揮できるS級の人がいる、ということは認めておこう。しかし多くの人は普通である。上述の通り、普通の人は場所や雰囲気で能力が上下する。上下すると分かっているなら、普通の人々に普通以上の働きしてもらえるような環境を用意した方が良い。根性論を押しつけるよりも場所を変えることから始めた方が合理的である。

もしあなたの周囲に、場所や環境なんて関係無いという人がいたら、下手に言い返さずに静かに離れた方がよい。その人の周りは、何を言ったとしても、きっと居心地の良い環境には成り得ないだろうから。

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