無印が壁掛式Bluetoothスピーカの販売を開始した。壁掛式CDプレーヤの姉妹品にあたるのだろうけど、壁掛式CDプレーヤがなぜ評価されたのかを十分に理解せずに作られたように思える。
無印、壁掛けタイプのBluetoothスピーカー。直販8,900円 – AV Watch
もともとの壁掛式CDプレーヤは、デザイナの深澤直人氏(武蔵野美術大学 専任教員プロフィール)がデザインしたものである。この壁掛式CDプレーヤは、紐を引っ張れば換気扇が回せる、という換気扇のメタファを活かしたデザインとなっており、ケーブルを引っ張ればCDが回る(再生される)ということを、自然に理解しやすい工夫が成されている。
換気扇のメタファを活かすためには「回るモノ」とその下に伸びている「引っ張れそうな紐」の組合せが必要不可欠になるのだけど、Bluetoothスピーカには「回るモノ」が無いので、このメタファを上手く活かせていない。これが好きになれない理由の一つ目である。
さらにいうと、壁掛式CDプレーヤが発売された2000年当時に比べて、最近では紐を引っ張れば回るタイプの換気扇も減りつつあることにも注意したい。つまり、紐を引くと何かが起こる、というメタファを自然に感じる人もまた減りつつあり、あえて紐を引っ張る操作をスピーカのスイッチとして採用する理由が薄らいでいる。今スピーカに対して何かしらのメタファを活かしたデザインをするのであれば、別のメタファを使った方が良いだろう。
以上の2つの理由から、この壁掛けBluetoothスピーカは壁掛式CDプレーヤに比べると残念なデザインになってしまっている。
人気のある製品の後継や姉妹品を作ることは悪いことだとは思わない。しかし、元製品の良さを活かすには、デザイナがどういった意図でその製品をデザインし、そしてユーザは何を良しとしてその製品を気に入っているのかを深く理解することが必要である。シンプルで良い製品になればなるほどその傾向が強くなるので、無印のようにシンプルな製品で勝負する場合には特に注意が必要である。
個人的に無印のシンプルなデザインは好きなので、ぜひ頑張って欲しい。
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