現場目線でのカイゼンが重要だと,いう企業が沢山あります.確かに,現場目線でカイゼンを続けていれば,いつか良い組織になりそうです.しかし,実際はそうなることはほとんどありません.これは,カイゼンを求めている上層部が,現場にカイゼンを丸投げにして,会社全体としてその知見を活かすための仕組みを用意していないことが原因としてあげられます.
現場のカイゼンは一定の効果が出る
オフィスにおける現場のカイゼンは,現在の業務の効率化を目的として,エクセルでマクロを組んでみたり,ウェブブラウザで動作する簡単なツールを整備したりしています.こういったツールを開発するのは現場の従業員なので,現場の苦労をよく理解された上で設計されていて,重宝されることが多いです.なので,担当者が職場にいるうちは定期的な更新もされて,良い感じに動作するのですが,大企業の独特な文化が,それ以上の悲劇を後に招きます.
異動によってもたらされるカイゼンの悲劇
日本の大企業では,従業員の定期的な異動があたりまえです.そのため,メンテしていた担当者も,いつしかその部署を去っていくことになります.そうするとツールのメンテナンスが疎かになります.なぜかというと,現場の人が作るツールは可読性や再利用性が低く,担当者以外には理解が難しいものになっている事が多いためです.
現場の人達は,便利なツールだったので継続したいけど使えない,そういった状態になって初めてシステム開発を検討します.しかし,想像以上の予算が掛かるから発注できないことがわかり,結局放置されます.結果として,カイゼン目的で作られたツールが使えなくなるどころか,逆に社員の稼働を余計に増やすことに繋がってしまいます.
カイゼンの知見が個人に蓄積されていることが問題
端的に言えば,社員が異動する前に,しっかりとカイゼンを組織として吸い上げて,体系化していれば,こういう問題は問題は起こらないのです.例えば,カイゼンで作られたツールを,社内システムの開発担当がしっかりと分析し,なぜそれが開発されたのか,なぜ部署内で上手く機能したのかを把握しておくことが必要です.さらに言えば,最終的に組織でシステムを更改する際に,それらの知見をしっかりと活かしていくことが大事なのです.
残念なことに,現在の仕組みの場合,カイゼンできました!と担当者が報告すると,よく頑張ったねといって担当者の評価をちょっと上げるぐらいのことしかしません.しかし,それでは担当者に経験が蓄積するだけで,会社として知見を蓄積できないのです.
現場のカイゼンから根本的なカイゼンへ繋げること
現場のカイゼンは,あくまでパッチであることがほとんどです.そのため,期限がくれば効果を失います.場合によっては,より酷い状況になることすらあります.
従って,なぜそのカイゼンが行われたのかを分析して会社としてノウハウを蓄積し,会社全体で根本的なカイゼンを目指す営みが必要なのです.現場にカイゼンを指示して,事例を共有するだけで満足している会社は非常に危険です.
こういった俯瞰的な取り組みに貢献できるのが中間管理職という役割なのですが,上層部の指令を部下にただ丸投げするような中間管理職が多いことが,とても残念でなりません.自分がプロジェクトリーダや管理職として動く際には,こういった俯瞰的な取り組みをできるように,常に意識しておきたいものです.
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