世の中には「規則だから」といって非常に面倒なことを求める人がいます.確かに,規則を守ることは重要なことだろうと納得できることも多いです.しかし,世の中には,十分な規則があるのに,規則を守るために必要以上に面倒なことをする人がいます.これは,規則を守ることが目的になってしまっているのです.

これは貴方達の定めた規則に従っているから問題無いですね?と確認すると,首をかしげて「でもなんとなく不安じゃない?ほら,こんな例外が起こりうるよ」といって,さらに細かい確認をすることを求めます.「その例外は99.9%起こり得ないことですが,今回のケースでは0.01%を求めるケースですか?」と聞くと「そうではないが,でも起こりうる可能性があるなら潰さないと」といってくる.たとえその基準を満たすのにとてつもない稼働が掛かるとしてもです.彼らは規則を守ることが目的なので,稼働やそれに伴って掛かるコストまで気が回らないのです.

とくに,非常に高い品質を求められる現場を経験してきた人にこういうケースの人が散見されます.そういった品質を求められる現場に慣れてしまっていて,たとえ職場に置いてある段ボール一つの配置場所ですらも同じ基準で考えてしまいます.

稼働やコストを考えなければ良いことをしているように見えるところがミソで,彼らはドヤ顔でカイゼンしました!と上に報告しています.また,上層部もそれを信用して評価してきます.後々になって成果が出なくなったり,やたらコストが高くなったりという問題が発生するのですが,その頃には当事者は異動したり昇進したりするので,責任を追及することは難しかったりします.なんとも悲しい話です.

こういった悲劇を回避するためには,稼働を強要する際に,表面上のリスクやコストの予測だけでなく,波及効果まで踏まえた予測が求められます.また,その稼働の影響についても,複数視点で指標を作り,評価することが望ましいです.

残念なことに,波及効果を考慮しない人が多すぎます.本当に規則を守らせたいのであれば,社員に下手な押しつけをする前に,守りたいと思う規則を適切にデザインするべきなのです.