シナリオプランニングは,もともとは軍事関係で使われ始めた将来予測のための手法である.予測される分岐点を抽出し,その分岐点毎にどのような展開が起こりえるかを,シナリオ(物語)として記述することで将来予測をイメージしやすくし,具体的な対応策を検討しやすくする.現在は,ビジネスの世界でも使われるようになり,一般に普及しているものだ.

過去の業績ベースでの予測だけでは,大きなパラダイムシフトを起こすような分岐が発生した場合に対応できない.分岐点とは,例えば,大地震が起きたら何がおきるか,自分達の独自技術を上回る技術が出現したらどうするのか,などのことを言う.こういった大きな変化がおきたときに,世の中はどう変化するのか,また自分達はどのような意思決定をしていくのかを議論することで,分岐に対する考察力・対応力を高められる.

ここで注意したいのは,シナリオプランニングはあくまで起こりうる可能性を予測して,それに対してどう立ち向かっていくのかを議論することが目的である.必ず起こる未来を予測するものではない.要するに,自分の中の「想定外」を減らすもの,さらに言えば,想定外が起きたとしても対応できる柔軟性を鍛えるためのものである.

ぱっと聞くと難しいように思うが,自分の日常生活でも簡単に体験できるのでやってみて欲しい.自分の身に起こりうるリスクについて分岐を考え,それぞれに対してシナリオを考えてみると良い.

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リスク1については,Suicaなどをカギと一緒に持っているから大丈夫などという,リスクヘッジをしている人もいるだろう.リスク2については,クレジットなどは保険が付いているから大丈夫となるだろうか.では,もし財布に保険証が入っていたら?免許証が入っていたら?という場合には自分はどのような対処をするだろうか.などと考えていくことで財布を落とした際のシナリオプランニングができる.

シナリオプランニングを用いて色んな可能性に対する対処を検討することは,思考の柔軟性を高める上でとても役立つ.頭の体操だと思って時々やってみると,自分の思考の柔軟性が変わってくるので,ぜひやってみて欲しい.