人工音声合成ソフトの初音ミク(VOCALOID)が生み出されたことがきっかけで,VOCALOIDによる作曲が一つの文化になりました.なぜそのようなことが起きたのでしょうか?一つの要因として,VOCALOIDのキャラクタ版権を厳しくしなかったクリプトン社の戦略があるといえます.

版権が厳しくないことで,キャラクタのn次創作が盛り上がりました.これは東方プロジェクトと似たものがありますね.さらに,VOCALOIDで革命的だったのは,Miku Miku Dance(MMD)という完全にフリーの3Dアニメーション作成ソフトウェアが公開されたことです.これにより,VOCALOIDのブームは音楽業界だけでなく,3D業界にも革命を起こしました.

MMD作者,樋口優氏のモチベーションは,大好きなVOCALOIDのキャラクタを自在に動かしたかっただけという単純な動機でした.しかし結果としてこのモチベーションが,3Dアニメーション業界に破壊的イノベーションを起こしたのです.MMDの爆発的な普及によって,最近ではプロ級の3Dモデラーが,非常に完成度の高い3DモデルをMMD用にフリーで公開するようになりました.さらにモーション,エフェクト,レンダリングエンジンなど,3Dアニメーション作成のために必要なあらゆる素材がフリーで公開され,シェアされ,n次創作に活かされています.言うなれば,いままさに3Dアニメーション業界においてオープンソース文化が咲き誇っているのです.

その中で,最近私がオープンソースの力に打ち震えたのが,2013年に公開されたみくみくにしてあげる♪【してやんよ】のPVです.

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素晴らしくあざといです.これは,G.J氏が,みくみくにしてあげる♪【してやんよ】という2007年に公開されたVOCALOID楽曲に対して,ままま式あぴミクというフリーの3Dモデルを使って,小倉唯というアイドルが踊ったダンスを3Dモーションに起こして,PVをデザインしたものです.

一個人がこのようなPVを作れることにまず驚きです.また,使用されている3Dモデルは非常によくデザインされていて,とにかくあざとい(大事なことなので二度言いました).このモデルが無料とは信じがたいものがあります.また,この3Dアニメーションを作るためのMMDも,もちろん無料.そしてこのダンスモーションも,制作者が無料で公開されています.

なんというオープンソースの力でしょうか.3Dアニメーションを作成するためのあらゆる素材やツールが無料で公開され,誰でもメンテナンス,改良ができるようになったことで,これほどのクオリティの作品を無料で作ることができるようになっているのです.

これはまさに,現代のルネサンス期といえるでしょう.個人の純粋なモチベーションによってこのような潮流が作れるとは,素晴らしい時代だと思います.今後,どのような素晴らしい作品が生み出されていくのか,期待は膨らむばかりです.