世の中ではiPadが優れたUXを提供した例としてよく紹介されている.しかし,iPad=優れたUX ではなく,iPadは優れたUXの中の一つの解でしかない.今回は,視点を変えてnexus7(Android)が提供する優れたUXを紹介する.

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UXの違いは目的の違い

端的に言うと,iPadはブラウジングなどの情報視聴に対して優れた製品である.対してnexus7はキュレーションなどの情報発信に対して優れた製品である.

iPadは美麗な画面でかつ,優れた操作感によって,動画,画像,テキストなどを非常にスムーズに閲覧することができる.また,アプリケーションのUIガイドラインとUI開発用のツールを提供することで(ある意味制限を付けることによって),UIに統一感を持たせることに成功している.これによって,ITリテラシの低いユーザ(子供やシニア)でも初見で迷わずに使えるし,快適な使用感を与えることに成功している.

一方で,nexus7も,基本的な操作の滑らかさはiPadに遜色ないレベルにあると言える.しかし,解像度,アイコンの美麗さ,UIの統一感の不足,自由度の高さなどによって,初見でのわかりやすさについてはiPadに劣る.ゆえに,ITリテラシの低いユーザには,何をしたら良いか分かりにくいという印象を与えてしまう.しかし,nexus7には,iPadとは比べものにならないほど良いUXを提供している部分がある.それが,キュレーション+情報発信に関する一連の機能である.

SendToのすばらしさ

nexus7には,SendToというアプリ連携機能がある.これによって,アプリ同士が簡単にテキストをやりとりすることができる.従って,たとえば,フィードリーダアプリで読んでいた記事を,素早くTwitterやFacebook,Evernoteなどに送ることができる.iOSにも類似の機能があるものの,Androidの開発自由度の高さのおかげで,iOSに比べてアプリ同士が気持ちよく連携してくれる.

また,Androidは複数アプリケーションを並行して扱う,マルチタスキングの機能がiOSよりも優れているため,フィードリーダで記事を眺めつつ,ブラウザで詳細を確認し,必要な部分を保存,SNSで共有などの作業を,並行して行いやすい.さらに,Androidはバックグラウンドでの処理もiOSより自由度が高いため,自分がnexus7を見ていないときに,フィードリーダなどの情報収集アプリケーションが自動的に情報を取得し,ローカルに保存しておいてくれるため,たとえネットワークが不安定な環境下(例えば電車での通勤中など)でもスムーズに情報をキュレーションできるのである.

まとめ

nexus7によって提供される,キュレーションのためのインタラクションデザインは,私のように,キュレーションや情報発信を好む人間にとっては非常に良い体験を提供してくれる.これによって,私はほとんどの作業をnexus7で完了できるるため,場所と時間を問わずにキュレーションができるようになった.さすがに記事の執筆にはノートパソコンを使うものの,心地よい携帯キーボードを手に入れられれば,いよいよ記事執筆までnexus7で完了できるかもしれないとすら感じている.

このように,何をもって優れたUXとするかは,使うユーザの置かれた状況やニーズによって異なる.もちろん,市場の反応の通り,多くの一般ユーザには,iPadをおすすめした方がよいと思っている.しかし,世の中には,あるターゲットに対しては,優れたUXを持ち合わせている製品も数多くある.その真意を発掘し,明らかにしておくことができれば,自分達が製品開発やサービス開発をする際にも必ず役立つのである.

スティーブ・ジョブズ I