Amazon Kindle Paler Whiteの素晴らしい点は,用途を限定することで思い切った機能削減をおこない,デバイスの特徴を最大限に活かしながらも低い価格設定を実現できたことにある.

Kindle PaperwhiteKindle Paper White

用途を絞り込むことの効果

iPadはマルチメディアブラウジングにフォーカスしたデバイスであることに対して,Kindleは本を購入して,読むことだけにフォーカスしたデバイスである.一見,全部の機能が入っていて,広い用途で使えるiPadの方がお買い得で,また便利であるように見えるが,その中で,なぜKindleは売れるのだろうか.

今タブレット市場で最も売れているiPadは,画面の美しさ,操作性,アプリケーションの充実度合いによってユーザを獲得している.それに対して,Kindleは機能をそぎ落とした変わりに何を得ているのか.デメリットで言えば,Kindleに搭載されたe-inkでは動画は見られないし,さらに言えば色も満足に再現できないので,満足にファッション雑誌すら表示することができない.しかし,その代わりに,Kindleには,紙と変わらない目への優しさと,2週間以上も持つバッテリー,さらに軽量性を獲得している.これによって,常に鞄に入れて持ち運べる.片手で保持してどこでも気軽に読書ができる,という特徴を提供できるようになったのである.

一部の機能を強調する利点

加えて,製造コストを抑えられたことで,本を購入ダウンロードするための,3G回線を(限定的であるとはいえ)無料で提供することが可能となっている.これによって,いつでもどこでも本を買って直ぐに読める,という体験を提供することに成功している.もちろん,iPadも3Gバージョンを提供してはいるものの,別途回線契約を結ぶ必要があり,通信費用も購入者が負担しなければならない.そのように考えると,本を買って読むということに関して,iPadとkindleとでは,手軽さが全く異なるものになっている.

ユーザの絞り込みがデザインの第一歩

このように,似たようなものでも,何をターゲットにするかによって,要求(ニーズ)や,それらに関係するステークホルダが変化する.よって,それらに対して,どんな機能を削った方が良いか,あるいは逆に強調するべきかが異なってくる.実際に,サービスをデザインする際には,ターゲットユーザの表出しない潜在ニーズをできる限り明確化し,そのニーズをピンポイントに満たす製品を生み出すことが,成功の第一歩といえる.

できるAmazon Kindle スタート→活用 完全ガイド (できるシリーズ)

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