さまざまな業界でオープン化が進んでおり,だれでも気軽にデザインを始められるようになってきています.つまる,デザインがどんどん民主化されていて,個人の力が強まっていっているいえます.と,そんなことを思いながら日々を過ごしているKinoです.こんにちは.たとえば,今はどんな業界のデザインが熱いのでしょうか?すこし考えてみましょう.

3Dプリンタ業界が熱い!

まず外せない業界の一つとして,3Dプリンターが挙げられるでしょう.昔は3D CADという造形のためのソフトウェアがそもそも数十万もして,とても高価なものでした.なので,企業に属する一部の人しか使うことができませんでした.さらにそれを機械(たとえば切削加工)を使って実物体として出力することは,さらに専門業者に高いお金を払わなければできませんでした.

しかし,3Dモデリングソフトウェアも,3Dプリンタも,今では個人でどちらも手に入れることができるぐらい安価になりました.これによって,業者やプロだったら普通はやらないような新奇性の高い造形や,新しい使い道が数々提案されるようになりました.さらに面白いのは,これらのアマの取り組みがプロに刺激を与え,プロの作品に取り入れられる,といったようなリバースイノベーションすらも起きています.

コンテンツ業界もニコ動を中心に

最近は3Dプリンタ業界が一番ホットなのですが,コンテンツの世界も負けていません.コンテンツの民主化といえば,ニコニコ動画が素晴らしいプラットフォームを作り上げています.プロが作った作品をアマが切り貼りしてMADを作り(2次創作),さらにそのMADのMADが生まれるという創作の連鎖,つまりN次創作が人気を博しています.

さらに,その営みを加速させるように,MMD(Miku Miku Dance)をはじめとして,様々なツールが無料で公開され,有志によって日々改良されています.こういったコンテンツの創造プロセスも,プロの世界で閉じているだけでは決して成り立たなかった世界であるといえます.最近では,MADでよく使われている表現手法が,アニメのOPなどで使われるようになったりと,こちらでもアマがプロに影響を与える現象が起きています.

ウェブ業界はオープンソースをさらに加速

オープンソースの火付け役ともいえるウェブ業界においては,当然オープンソースの考え方が根付いており,日々オープンソースソフトウェアの開発が行われています.話題のTwitter bootstrapやjQueryなどを始めとして,一生かかっても使い切れないほどのライブラリがオープンソースとなっています.

さらに最近では,IFTTTのように,サービス同士を自由に繋げて新しいサービスを生み出すようなプラットフォームも用意されてきていて,もはやプログラムを書くことなくサービスをマッシュアップすることが可能になってきています.そして,クラウドソーシングのように,思いついたアイデアを安価に誰かが実装してくれる時代にもなっています.オープンソースやマッシュアップ,クラウドソーシングの力を借りて,思いもよらない,素晴らしいデザインが量産される日がくることは間違いないでしょう.

プロは働き方を変えないと失職する

このような潮流を見ると,様々なデザインが民主化してきていて,個人でも自由に扱えるものになってきていることがわかります.今後,このような流れはさらに加速するでしょう.このように民主化が進むデザイン業界において,プロはアマと真摯に向き合い,アマの可能性をプロの世界へ還元するスキルが求められるようになるでしょう.また一方で,アマの大衆的な考え方から一歩離れて,新たな世界を切り拓く独自性を維持する必要性も高まるでしょう.こういった,バランス感覚のあるプロこそが,今後のプロとアマの世界が限りなく近づいた世界において重要なアイデンティティになるといえます.

私もデザインに関わる研究者として,民主化の流れに上手くのって,良いデザインを生み出していきたいものです.