JR九州が、日本初のクルーズトレイン:ななつ星 in 九州を発表し、各所から注目を集めている。JR九州は鉄道事業がメインのはずなのに、なぜこのような観光的な戦略を打ち出しているのだろうか。

JR九州、反響に驚き 日本初の「クルーズトレイン」に欧州からも熱視線+(1/2ページ) – MSN産経ニュース

鉄道事業だけでは成り立たない

JR九州は、もはや鉄道事業が全体収益の3割程度にしかならない状況になっており、鉄道事業だけでは黒字を出せない状況にある。その代わりに、観光事業や不動産事業によって収益を得ているのが現状である。そのため、JR九州では観光活性化のために、特徴ある列車を様々運行して利用者を増やす試みをしている。つまり、移動手段という価値を与える列車ではなく、移動する過程を楽しむという価値を与える列車を生み出している。

その他事業(ドメインシフト)で稼ぐ

今回発表した「ななつ星」はまさにこの考え方の先端をいくものである。今まで打ってきた戦略の集大成として、移動する列車の中で得る体験の価値を最大化することに注力したのである。今までの成功があったからこそ、最高で55万という価格設定にも関わらず、多くの人々が期待をもって応募が殺到したといえる。

鉄道という移動手段のように、同等の価値を提供できる手段が登場したときにその市場はコモディティ化し、価格競争に巻き込まる。このとき、性能差で勝負したとしても最終的には性能がユーザの需要を超えてしまい、ユーザは離れてしまう。そのような中で生き残るには、異なるドメインにおいて、新しい価値を提供できることが重要なのである。

そういった意味でJR九州は、自分達の持つ資源と、満たされていないユーザの需要をよく分析し、見事なドメインシフトを成し遂げた。JR九州のドメインシフトは、そのまま他業種に適用できるものではないが、不毛な価格競争を繰り広げている多くの日本企業が見習うべき点は多い。