透明な導電回路が作れるようになったことで、技術的に透明スマートフォンが作れることが示されたが、透明スマートフォンはユーザにとってどのような価値を提供できるだろうか。

ついに透明スマートフォン現る!―年内にも市場投入へ|ガジェット速報

透明スマートフォンは後ろが透けて見えるスマートフォンである。確かに技術的には革新的なもので、色々な世界が拓けるであろうことは予想できる。しかし、反対側から見ても表示が透けてみえるというのは問題のように思える。

一般ユーザにおいて、通常のスマートフォンにすらプライバシー保護シートを付ける時代において、透明である必要があるのだろうかという疑問が沸く。透明スマートフォンよりは、例えばSamsungが提案している商品ディスプレイのガラスに透明液晶画面が使えるといった提案の方が価値としては分かりやすい。新しい技術をユーザに届けることを考える際には、分かりやすい利用価値をユーザに提供することが重要である。まさにそのような価値を提案できる、歴本先生という素晴らしい研究者がいる。例えば、歴本先生はWISSというシンポジウムで、ガラスのように液晶が使えるようになることで、どのような世界が描けるかということを提案して最優秀賞を取得しているので、ぜひ紹介したい。

Squama:モジュラーな透明度の制御による建築要素

1.実世界モザイク

開放性の確保(視界の透過性)とプライバシーの確保(視界の遮断)は矛盾する要求である。Squamaでは窓の表面の部分的な透明度の変化をコントロールすることでこの問題を調停する。ちょうど写真の一部をぼかしたりモザイクを掛けたりして隠す処理を、現実世界の景観に対して行っていることに相当する。

2.プログラマブルな影

Programmable Shadows(プログラマブルな影):太陽光を遮断したい領域を指定すると、システムが遮蔽すべき窓の領域を日照の方角から自動的に決定する。たとえば、部屋の中の子供や赤ちゃんに影を設定して、強い日照から守りたい場合などに有効である。

3.アンビエントディスプレイ

窓全体をアンビエントなディスプレイとして利用することが考えられる。窓全体のイメージがフラッシュするなどして、居住者に情報の変化を提示する。また、「プログラマブルな影」により、影として情報を提示することも可能である。

まとめ

このような提案は、技術としてはある程度確立されたものを、以下に現実世界で活用可能か、また、活用可能だとすればどのような技術が進化するとより望ましいか、といった部分まで含めて語られているので、とても興味深い。

本ブログでも何度か述べているように、技術革新とセットで、どのような状況でどのように利用できるかを適切に提案できることが非常に求められる時代になっている。さすがに歴本先生ほどのビジョンを提案することは難しいかもしれないが、常にどのような人がどのように使うのかを考えながら技術やサービスを考えたいものである。