日本の奨学金(特に学部生向け)は、奨学金というよりも限りなく借金に近いということを認識した方が正しいのだけど、この借金的な奨学金の制度を変えられれば、優秀な学生が努力する土壌を作れるかもしれない。

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アメリカでいう奨学金(Scholarship)とは、返済義務の無い給付型のものを指す。一方で日本で最もメジャーな日本学生支援機構の第一種の奨学金は、無利子とはいえ返済義務のある貸与型の奨学金(Loan)である。実は日本でも平成10年までは第一種の奨学金については教育者になれば返還が免除されていたのだけど、不景気のせいかその制度は無くなってしまった。なので現状では、大学院生において優秀な成績を収めた場合に返還が免除されるだけになっている。つまり、学部生が奨学金の返還を免除される術は無い。

そのため、奨学金を貸与された学部生には返還免除などの努力をする理由がない。奨学制度を活かすならば、学部時代においても業績が優秀な者に対しては奨学金の返還を免除するような仕組みを作った方が良い。金銭的なインセンティブが発生することで、奨学金をもらう学生のうちの一部は良い業績をあげるために努力するようになる。私も修士過程に通っていた頃に、奨学金返還や授業料を免除するために、良い業績を出してやろうと頑張っていたクチなので、学部でもそういう制度がある方が良いと考えている。

なお、大学生は1学年あたりに73万人ほどいるので、そのうち半数が奨学金を借りたとして、さらにその中の10%が奨学金返還免除(4年で400万程度)できたとすると、年間でおよそ1450億の免除となる。安くはないものの、国の教育関連予算と比べれば、それほど非現実的な金額では無いように思える。大学内で上位1割に入れば400万を獲得できると思えば、努力する価値があると判断する学生は結構多いのでは無いだろうか。

もちろん、実現するにはより緻密なインセンティブのデザインが必要である。しかしながら、競争が少ない日本の大学生に対して、奨学金を使って競争原理を入れてみることはそんなに悪いことではないと思うのだが、どうだろうか。