UX (User Experience:ユーザ体験)は、近年よく使われすぎてバズっているけど、実際に良いUXといわれるものをユーザに与えるには、どのようなことに気をつけなければいけないのだろうか。色々な切り口があるとは思うけど、今回は、UXデザインについて「数ミリ秒〜数秒、数分〜数時間、数日〜数ヶ月」という3つの時間軸で分けて考えてみよう。

数ミリ秒〜数秒

この時間軸におけるUXは、主に見た目や操作感によってもたらされる。ユーザがデバイスやサービスを使うときに、見ていて心地よいかとか、単に操作していて楽しくなるかといった部分がUXに効いてくる。UXを向上させるための基本的なものであり、満たすことが求められる部分である。

例えば、iPhoneはこの部分が非常に洗練されている。見た目の格好良さ、タッチパネルのレスポンスの良さ、そして動きのスムーズさを演出するさまざまなアニメーションの工夫などによって、単純に触っているだけでも楽しいデバイスを作りあげている。ロック解除やバウンスバックなどのインタラクションについて特許を取得していることからも、操作感を非常に重視していることが伝わってくる。

数分〜数時間

この時間軸は、使用時の使いやすさや分かりやすさ、つまりユーザビリティという言葉が当てはまる部分である。例えば、製品の箱を開けるときに迷わずにあけられるかとか、初めて触ったときでも迷わず使いたい機能が使えるか、そもそも何が使えるかを理解できるかなどが効いてくる。比較的デザインがしやすい部分といえる。

この時間軸が適切にデザインできると、ユーザに対してデバイスやサービスを通じて様々な成功体験を与えることができる。ウェブサービスなどでは一度でも失敗体験をすると多くの新規ユーザは離脱してしまうので、特にこの時間に注力することがとても重要である。

数日〜数ヶ月

この時間軸は使い続けることで得られる満足感に関する部分である。モノ自体の品質以外に、所有・利用し続けることによって得られる価値を提供することで、長期的なUXを醸成できる。例えば、何か問題があった際に手厚いサポートが受けられるなどが一例として挙げられる。何かあってもこのブランドの製品を使っていれば、適切にサポートしてもらえるという安心感を与えることで、総合的にモノ自体の品質以上の価値をユーザに提供することが可能となる。

代表例としては、富士通の提供しているらくらくフォン向けの専用コールセンタや、AppleのGenius Barなどが挙げられる。どちらもサポート自体が収益をあげることはないものの、ユーザの獲得やリテンションに寄与し、結果として収益に繋がっている。この時間軸は、特にターゲットユーザがアクティブでない場合に注意深くデザインすることが求められる。

まとめ

良いUXをユーザに与えるには、提供するサービスの特性やターゲットユーザの属性に合わせてサービスをデザインすることが重要である、その一つの方法として、本記事では時間軸によるUXの区切り方と、それぞれの時間軸における特徴を紹介した。皆さんがUXについて考える際に、少しでもお役立ていただければ幸いである。