富士通はらくらくスマートフォンなどで有名な富士通では、ヒューマンセントリックエンジンという技術を導入し、人に合わせた使いやすいスマートフォンを実現しようとしている。とはいえ、ヒューマンセントリックエンジンとは一体どのようなもので、どのようなユーザ体験を与えられるのかを少し考えてみる。

ヒューマンセントリックエンジンとは、富士通が長年培ってきたモバイルセンシング技術により、使う人を中心にした豊かで快適な生活をサポートするシステムの総称だという。具体的には「聞きやすさ、見やすさ、操作のしやすさ、ライフサポート」の4つのセグメントを支援することで実現を目指している。

ヒューマンセントリックエンジンと サービス展開 – Fujitsu

どのようなコンテキストにおいて、どのようなユーザが嬉しいかということを熟慮して、技術をユーザのニーズとマッチングさせようとする考え方には共感できる。また、一つ一つの技術は他社と比較して突出しているとは言い難いものの、それらを一つの思想でまとめあげて統合的に提供することは、UXを向上させるためにとても大切なことだといえる。

サービスやデバイスにおいて、いくつかの機能がそれぞれ優れていたとしても体験品質を向上させることは難しい。つまり、デバイスを手に入れた際の印象、操作感や分かりやすさ、便利な機能との出会いと成功体験、使い込むことによる愛着、など様々な場面において統合的にUXをデザインすることで体験品質の向上を図れる(参照:UXを考えるときに抑えると良い3つの時間軸)。

富士通では、らくらくシリーズ専用のコールセンタを設けるなど、デバイスや機能のデザインだけでなく、サポートサービスなども含めて体験品質を向上させる仕組もデザインしようとしている。そのため、ヒューマンセントリックエンジンなどのデバイスの進化に合わせて、サポートや販売のデザインについても継続してデザインを洗練できれば、ITリテラシが低めの中高年にも、より受け入れられやすいスマートフォンメーカになれるかもしれない。

一方、Androidスマートフォンは基本的な操作性の良さやスムーズさについては、iPhoneなどに劣るのが現状である。忘れてはならないのは、操作をしていて楽しいと思わせられるほどにスムーズな操作性は、体験品質の向上において基本的でかつ満たすことが重要な部分であるということだ。スマートフォンメーカには、独自技術や機能をスマートフォンに詰め込むために、基本的な部分を犠牲にすることは無いように気をつけて欲しい。