とある研修でワークショップ(WS)をデザイン&ファシリテーションすることがあったので気付いたことを備忘録としてまとめておく。

掛ける時間とアイデアの質は比例しない

当たり前のことだけど、時間を掛けたからといって良いアイデアが出るとは限らない。今回の研修には持ち帰り課題があり、自由に時間を使ってチームで議論をして結論を導いていく研修だっので、多くのグループが時間を掛けて議論をしていたのだけど、結局のところ発表前日に駆け込みでアイデアをまとめるというチームが数多く見られた。

種々のステークホルダが参加するワークショップにおいて、皆が集まれる限られた時間で適切に発散・収束できることが重要である。効率よく十分に良いアイデアを出して、その中から参加者の合意が取れるアイデアを選んで、コンセプトまで具体化できることが求められる。

合意形成の取り方で発散の仕方が変わる

限られた時間で結論を得るためには、議論の各所での合意形成が重要となる。ぶれない基礎を築くことで議論の方向性をある程度絞った上で発散ができる。合意形成が曖昧なまま無理に収束しても、そもそも論で振り出しに戻る可能性を高めるだけである。特に、日本人は自分の疑問をはっきりと述べず、後々になってから発言する人も多いので、積極的に介入して発言を促したほうが良い。

また、合意を強固にする手段として、第三者に議論の経緯を説明することが効果的である。同じ内容を繰り返し丁寧に説明することで、グループのメンバもその説明を聞くことになるので議論内容を整理しやすくなるし、もし議論の認識にズレがあった場合には確認をするきっかけにできる。

記録はできるだけ残す

人は想像以上に物事を忘れやすい。特に、期間をあけて何度か議論するような場合には、議事録だけでなく議論時の写真や音声などを残しておくと良い。また、議論の軸になるアイデアに名前を付けることも良い。名前を付けることで愛着がわくとともに、形成した合意を維持しやすくなる。

人は、視覚や聴覚に訴えかける記録があると、それらをきっかけとして議論内容を想起しやすくなる。議事録を作ることに比べたら、写真を撮ることなどは対した労力にはならないので、こまめに撮るクセを付けると良いと思う。

自分達が面白いと思うものを議論しよう

当たり前のことなのだけど、自分達が良いと思えるものを議論することはとても大切なことだ。いくら筋が通っていても自分達が納得できないものを議論し続けても、最終的に良いものにはなりにくい。なので、筋は良さそうだけど納得できないというときは、ユーザ調査などを実施してデータを集めて検証し、納得してから議論を進めた方が良い。その方がアイデアは出しやすくなるし、少々突飛なアイデアも受け入れやすくなる。もちろん、自分達が良いと思うアイデアが出せた時も、第三者やターゲットユーザの意見をもらうことも忘れないようにしたい。

ワークショップで数値で示せないものを捉える

よく企業だとROIなどの数値で可能性を示せと言われるけど、それよりも前に、本心から自分達が面白いと思えるか、またターゲットユーザに面白いと思ってもらえているか、という部分が重要である。もちろん数値で示すことも重要であることは間違い無いけど、ワークショップをやっていると数値だけでは捉えきれないことも多いなと感じている。そういった部分を大事にできなければ本当にユーザの心を捉えるようなアイデアとかサービスを生み出すことは難しいと思うし、それを捉えられる一つの方法がワークショップなのだと思う。