最近はAppleを初めとして、素晴らしい技術開発が進み、静電容量方式でマルチタッチ対応のタッチパネルが急速に普及している。モバイル業界においては、もはやタッチパネルは当たり前になっているし、MicrosoftもWindows8でタッチパネルに対応したメトロUIを提案しており、マウスのシェアを奪っている。この調子でいくとマウスはタッチパネルに駆逐されてしまうのだろうか。

結論から言うと、マウスはタッチパネルによって完全に駆逐されることはない。なぜならば、マウスとタッチパネルは異なる長所と短所を持つので活躍するドメインが異なるためだ。

マウスとタッチパネルの長所と短所

スマートフォンやタブレットのように、情報閲覧やキュレーションなどのブラウジングがメインのデバイスにとっては、タッチパネルによるポインティングとジェスチャはとても適している。特に、自分が実際に触った場所が反応するので初見でも操作を理解しやすいことが長所である。

対して、マウスは操作の理解容易性についてはタッチパネルに劣るものの、人間の指に勝る操作分解能があるため、細やかな作図や図の移動などがやりやすい。よって、パワーポイントやCADの操作についてはタッチパネルよりもはるかに向いている。

この差異は、絶対座標系を使っているか、相対座標系を使っているかの違いが大きな要因となっている。タッチパネルは絶対座標系を使っているために指の操作分解能を超えることができないが、マウスは相対座標系を使っているために、指の操作分解能を超えることができる。また、マウスは物理的には小さな運動で大きい画面を比較的容易に操作することも長所である。同様に、ノートパソコンなどに搭載されているタッチパッドも相対座標系を持つため、マウスと同様にタッチパネルよりも細かい操作がやりやすい。しかし、移動が手、クリックが指と役割分担がされているマウスに比べ、タッチパッドは移動とクリックの操作とがどちらも指に割り当てられるため、ドラッグ操作などがマウスに比べると難しい。

なお、タッチパネルにおいて操作分解能が低いことについては、ズーミングユーザインタフェース(ZUI)を導入することで不足する分解能を補填している。これにより操作性を高めることは可能になったが、同時にズーム操作という操作の手間が発生している。

以上のことから、タッチパネルやタッチパッドはマウスのシェアを奪うことは間違い無いのだけど、マウスが駆逐されることはまだ大分先のことのように見える。