最近、意味あるイノベーションを起こす手法として「デザイン思考」という考え方が広まりつつある。アメリカの一流大学であるスタンフォード大学でもd.schoolというデザイン思考を専門的に教育するスクールが作られていて注目を集めている。今回は簡単にd.schoolのデザイン思考のやり方をご紹介する。

デザイン思考の5ステップ

デザイン思考は、下記の5つのステップを繰り返し行うことで成立する。基本的には人間中心設計(User Centered Design)の考え方とほとんど同じだけど、イノベーションプロセスなので、より発想のステップが重視されたものになっている。

1.  EMPATHIZE:共感
「意味あるイノベーションを起こすには、ユーザを理解し、彼らの生活に関心を持つ必要がある」
2. DEFINE:問題設定
「正しい問題設定こそが、正しい解決策を生み出す唯一の方法」
3. IDEATE:発想
「正しいアイデアを見つけるためではなく、可能性を最大限に広げるために行う」
4. PROTOTYPE:試作
「考えるために作り、学ぶために試す」
5. TEST:テスト
「テストは、自分の解決策とユーザーについて学ぶための機会」

ポイントはユーザ視点とイテレーション

興味深いのは、イノベーションとは単に新奇性の高いモノを生み出すことではなく、ユーザに受け入れてもらえる形にデザインすることが必要だという点が強調されていることである。つまり、いくら優れた技術を産み出したとしてもユーザが受け入れてくれる形(理解できる形)で提供できなければ、それは意味あるイノベーションであるとはいえない、ということである。また、そのためには、実際のユーザにフィードバックをもらいながらデザインを繰り返すことが重要であると指摘しているもまた興味深い。

一昔前よりもはるかに人の趣味趣向が多様化した社会では、ターゲットユーザを絞り、ピンポイントなニーズを導き出した上でサービスをデザインすることは難しくなっている。さらにいえば、新規に産み出した技術を、シーズ思考でユーザのニーズに適切にマッチングさせることはもっと難しい。

だからこそ、一度技術視点を離れてユーザ視点で物事を考えて発想し、ユーザと共に繰り返しデザインを直していくことを重視する手法が注目されるようになったのである。また、それに伴って世の中にはデザイン思考を実践するための工夫やツールが整備されてきているので、頭で色々考える前に、まずは一度デザイン思考にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

イノベーターのためのデザイン思考・学習マップ –  慶應義塾大学SFCデザイン思考研究会