電子データとして本を持っておくと、スペースは取らないしどこでも気軽に持ち歩けてとても良い。しかし、日本ではeBookでの出版が少ないのでよく自炊をするのだけど結構面倒くさい。なので自炊代行業者が流行ったりするのだけど、自炊代行業者には著作権的に問題であるということで、業務が差し止めされたりしている。とはいえ、最近自炊ルールを策定することでスキャン業者が商売をできるようにするという動きがある。しかし、一見するとどうもユーザのためにならないルールに見えるのだが、このルールは誰のためにデザインされたモノだろう。

自炊ルール策定で代行業者にスキャンを許諾、「Myブック変換協議会」発足 -INTERNET Watch 

この策定ルールには、自作代行業者に著作権使用料を取ることも含まれる可能性があるとのことである。とはいえ、元々代行業者が流行しているのは電子版を気軽に手に入れられないことが原因であるのに、電子出版の整備をせずに、なぜ代行業者から著作権使用料を取ろうというのか。整備が進まないせいで、わざわざ裁断→スキャン→電子化して保存をするという手間をかける必要がある。つまり、代行業者というのは、電子データで本を作っている現代において、一度アナログ化したものを電子データに戻すという非常に非効率的な作業に対してお金が支払われているのである。本来は電子データを出版社から直接もらえれば、ユーザはこのような手間にお金は支払わずに済む。結果として、それらの手間に支払っているお金が著作者に回りやすくなるのである。例えば、出版社が書籍購入者が会員登録をすれば電子データ(会員番号付)を50円でダウンロードできるようにするとか、そういう仕組みを導入すれば良い。

対して、この代行業に著作権使用料を課すということは、”蔵書を電子ファイルに変換することで、ユーザーはより本を活用できるようになる”という目的からは大きく逸脱したデザインであり、むしろ「著作権使用料を余分に徴収するためのデザイン」であると言わざる得ない。確かに、ステークホルダの利益を確保することはサービスをサステイナブルなものにするために重要なことだ。しかし、無駄な中抜きの業者の利益の確保に囚われすぎて、エンドユーザにしわ寄せがくるデザインにしては決してしてはならない。