アイアンマンの胸のアレ(アークリアクター)から婚約指輪が出てくる.アイアンマン好きの彼女にはたまらない演出だっただろう.こういった演出ができる男性なりたいものである(※ただし,イケメンに限る).さて,このような女子を感動させる良い体験を生み出すにはどうすれば良いのだろう.

アイアンマンの胸のアレから指輪が飛び出す、ギークでサプライズなプロポーズ(動画)

アイアンマン(1枚組) [DVD] アイアンマン(もよりのヒト的にはかなりおすすめ!)

ユーザ体験(UX: User Experience)を演出するためには,モノそのものの品質の他に,ターゲットユーザの背景知識,趣味趣向,利用時の状況などが大きく関わる.今回のケースを簡略化していえば,ユーザは彼女,結婚を前提にお付き合いをしている彼氏がいる.そんな彼女に与えたい体験は「一生の思い出になる感動のプロポーズをされる」というところだろうか.

このとき彼氏に求められる要件は,彼氏本人とプロポーズの言葉だけである.とはいえ,世の中一般的に求められる要件には結婚指輪もあるので,用意した方が身のためだろう.ここで陥りやすいパターンの一つは,給料三ヶ月分の指輪(高性能な品)を買って満足することである.しかし,これだけでは良い体験は生み出せない.

できる彼氏は,結婚を切り出すタイミングを待っているか,どういったコトを望んでいるのかを観察して分析する.このときに重要なのは,直接的に聞かずに,観察から結論を導き出すことである.故Steve Jobsも下記の通り述べている.

“製品をデザインするのはとても難しい。多くの場合、人は形にして見せてもらうまで,自分は何が欲しいのかわからないものだ” by Steve

それを知ってか知らずか,本件の彼氏は観察結果から彼女のニーズを把握し,ニーズをどのように満たすか,つまり演出を考えた.そこで,彼女のニーズとしてあるアメコミ(アイアンマン)が好き(機能外要求),とプロポーズとの両方を満たすことを思いついたのである.その結果,アイアンマンの象徴的なアイテムであるアークリアクタと指輪とを掛け合わせた演出をすることで,彼女を感動させることに成功した.

きっとできる彼氏のことだから,どういったタイミングでどういう身振りでプロポーズするかといった,インタラクションデザインも完璧だったに違いない!

この例でわかるように,良いユーザ体験を演出するためには,一般に言われる良いもの(要件)を揃えれば良いわけではなく,個々のニーズに合わせて解を考えなければならない.今回はターゲットユーザが一人であるから比較的考えやすいのだが,これが実際のサービス開発となると,ターゲットユーザは複数,不特定になるので難しいのである.そう考えれば,SEの皆さんのお仕事に比べればプロポーズのデザインはたやすい作業といえる?かもしれない.