何か新しいことを生み出すときには、1.アイデアを沢山出して、2.アイデアを分析してまとめ、3.ユーザに見せてフィードバックを得る、という3つのステップを繰り返すことがとても重要である。この営みを一部のコミュニティではデザイン思考といっていたりする。最近とても注目されているプロセスなので、具体的にどのように進めればよいのか、本記事では各ステップの具体的な手法を挙げながら、デザイン思考のプロセスを簡単にご紹介する。

1.アイデア発想

アイデア発想においてメジャーなのはやはりブレインストーミング(Brain Storming)だろう。ブレストはグループで行う発想法である。あるテーマについて馬鹿みたいなアイデアでも良いので出せるだけ出して、広い思考の発散を狙うものだ。ポイントは「背景の異なる人が複数人参加する」ことと「人がアイデアを出したことを心から賞賛する」ことである。

まず、背景のことなる人が複数人参加することで視点を増やすことができ、発散や連想が起きやすくなる。最低でも男女をバランスよくブレストに加えた方が良いし、さらにいえば外国人が入るとなお良い。人数としては3〜5人ぐらいがちょうど良い。

もう一つ忘れてはならないのは、アイデアを出すことを心から賞賛することである。これは間接的に、中身の質は問わないといっている。アイデアの質は視点の違いによって異なるので、アイデアの発想フェーズにおいては議論するだけ無駄である。とにかくアイデアを出してくれたことを賞賛し、アイデアから連想してより良いアイデアを出すことに集中することが重要だ。

2.アイデア分析

次に、沢山出てきたアイデアをまとめていくフェーズでは「親和図」というグルーピング手法が有名である。出てきたアイデアで近しいモノをグルーピングし、それに対してラベルを付けることで、アイデアの抽象度を上げていくのである。グルーピングは、始めに「軸を決めない」ことが重要である。グループはMECEである必要はないし、全てがグルーピングできなくても良い。「〜系」とか言い始めると危険なので注意しよう。ラベルも短い単語である必要はないので、グルーピングの面白さが伝わるように短文で示すことをおすすめする。

親和図がある程度できたら、今度はグルーピング同士の関係性を導く。同じテーマから出てきたアイデアのはずなので、なぜこういうグルーピングになったのか、トレードオフや共通点、時系列などで見て関係性が無いかを見ていく。これにより、複数の関係性に有効な「ユーザニーズ」を見つけられたり、議論が足りないポイントが見つけられたりする。そこからさらにアイデアを発想して分析して、と繰り返しながら徐々に具体化していくことが重要である。

3.具体化とフィードバック

これは良いかもしれないと思うアイデアが固まってきたら、直ぐに形に(プロトタイプ)することが重要だ。プロトタイプは紙芝居でも、段ボールで作った模型でも、人が視覚的にみてわかる形にすることで、ユーザからのフィードバックを得やすくしたり、自分達自身がそのアイデアがどういうものなのかを、より具体的に認識する良いきっかけになる。

デザイン思考におけるプロトタイプはエンジニアリング業界におけるプロトタイプと全く異なると認識しておこう。エンジニアリング業界のプロトタイプは製品仕様を確認するためのものなので、コストをかけて精巧につくる。一方でデザイン思考のプロトタイプはアイデアの意図や良さが伝われば良いので、精巧である必要は無いし、モノを作ることすら必須ではない。なので、おすすめは寸劇をやるとか、紙芝居と段ボールで作った小道具を見せたりすることだ。

あとは作ったプロトタイプを恥ずかしがらずに人に見せて、堂々とフィードバックを得ることだ。最初は怪訝な顔をされるかもしれないが、どんなにチープなプロトタイプでも人はフィードバックを返してくれる。なおフィードバックは、アイデアの善し悪しを評価するというよりも、アイデアをより良くするための「学び」であると認識すると良い。ユーザはアイデアの評価者ではなく、アイデアをより良くするための協力者なのだと知っていれば、ユーザの声を聞くことを楽しみやすくなる。

以上のやり方はアイデアを生み出し具体化するための一手法でしかなく、他にも色々な手法がある。しかし、どんな手法を使うにしても、一度で良い結論に至ることはとても稀なので、焦らずに発散と収束を繰り返しながらアイデアを良い形にしていくことを心がけよう。なお、他の手法についても詳しく学びたい方はぜひ、101 design methodsを読むことをおすすめしたい。