人口減少や高齢化が進むにつれて、都市部も農村部も、時代に対応した地域活性化が求められている。例えば、トップダウン的な施策からボトムアップ的な施策への変革だったり、全国一律から地域独自の住民創発型の地域経営が求められたり、都市への個別施策から複合的・総合的に考えることが求められたりと、色々な変化が求められている。都市部と農村部との地域活性は多様な要求が絡み合う複雑な取り組みなのだけど、どのようにして進めていけば良いのだろうか。

農村と都市との共生

地域活性の一つの取り組みとして、都市部と農村部とを結びつけようとする取り組みがある。例えば、「グリーンツーリズム」(農村地帯でゆっくりと過ごす休暇を提供するサービス)が挙げられる。グリーンツーリズムは、地方の人には都市の人々に対してサービスを一方的に提供するものではなく、農村と都市とを結びつけるコミュニティを形成するサービスである。グランツーリズムのように、多地点を繋いで大きなコミュニティを形成して人やモノの交流を起こすことは、地域活性においてとても大事な役割を担う。

このような地域間でのヒトやモノの循環が持続するには、3つの循環が必要である。まず始めに「お金」の循環が必要で、次に「情報」の循環が起きることが必要で、そして最後に「人材」の循環、つまり外から人がやってきて定着する、もしくは他地域に人材が移動して定着するといった循環が必要になる。これら3つの循環が上手くいくことによって、農村と都市部とが結びついたコミュニティが持続するようになる。

農都共生が成功している国フランス

フランスは農都共生が上手くいっている例として良く挙げられる。フランスには地方自然公園、つまり農業公園を整備する制度がある。この制度により、都会の人が農村にいって楽しめるように農村がデザインされている。この制度は開発と保護の共存を図りながら農村地域の発展を進めるもので、この制度によって農村は様々な助成を受けられるようになる。その代わりに、緻密な地域計画立案と実施が求められるので、良いインセンティブが働いて、計画的な農業地の整備が継続的に行われるようになっている。

食の景勝地

具体例として、「食の景勝地」という認定制度が挙げられる。1995年からスタートした施策で、景勝地に選ばれるには「質の良い食品」「景観」「人の受け入れ体勢」「人材」の4要素を兼ね備えることを求められる。この認定がされた土地に行ってみたい!と思うようなデザインがされている。別名、フランス食文化のショーウィンドウとも言われていて、例えばボフォールの街が有名である。

また、フランスでは、健康増進の一環として田舎に自転車旅行するのが一つのブームである。それに伴い、田舎にはパンクの修理スタンドや空気入れがあったりと、よく整備されている。フランスでは、農業農村の他面的機能の理解、景観の重要性への理解、健康作りに対する関心の高さ、施策や設備の充実など、農都共生が上手くいくように、よくよくデザインされているといえる。

おわりに

世の中を広く捉え、どのようなユーザにどのような価値を提供できるのかをしっかりと分析し、複数の要求を満たすサービスを提供することによって持続可能なシステムを構成できるというのは、抽象論としてよく言われることだけど、今回紹介した農都共生の取り組みは、その思想の一端が見られる良質な例であった。