イノベーティブな人がいても,その能力を発揮できる場所がなければイノベーションは世に出ない.なので,人が安心してイノベーションを起こせる「場」を整備することが重要なのだけど,どうも日本では「場」が軽視されているように思える.

場を整備するとは,雰囲気を作ること

場の整備とは,物理的な空間を整備することではない.人がイノベーティブになれるかどうかは心理的な部分が大きいので,「自分のイノベーティブなアイデアに耳を傾けてもらえるんだ!」と思ってもらえる雰囲気が大事である.なんだ簡単じゃないかと思うかもしれない.しかし,人の元々の性分として,自分の視点と違うアイデアを軽視したり無視したりする傾向が強いので,強く意識しないとなかなかできない.なので,違う視点のアイデアに耳を傾けることを強く推奨する組織にすることが重要となる.

そういった場を整備するために,プロジェクトの進め方や評価尺度を上手くデザインする必要がある.イノベーションが突飛なものであるほど,プロジェクトは既存の事業分野の視点では評価できない.なので,イノベーティブなプロジェクトは,既存組織から独立させて責任を委譲し,自由に動けるようにすると共に,評価尺度も新しく定義することが重要になる.

雰囲気は組織全体で作ること

こういった場を整備するには,研究開発部門だけでなく,業務部門や人材管理部門など,全ての部署の理解が必要である.そうでなければ,いくら良い研究部門でイノベーティブなアイデアが生まれても,他の部門に潰されてしまう可能性が高い.残念ながら,大企業の組織はイノベーションを阻害する場になっていることも多い.個人の実力で説明できる成績はせいぜい30%で,残り70%は組織によるものなのに,場の整備よりも個人の尻を叩くことに労力を割いている.

「場」に対する5つの検討項目

さて,あなたの組織はイノベーションを起こしやすい場を整備しているだろうか?まずは下記の5項目について考えてみると,ざっくりとアタリを付けられる.

  • 学習の手段として,リスクテイクを推奨しているか
  • 失敗から学習した人に見返りがあるか,それとも処罰があるか
  • 失敗から学習して成功したプロジェクトはあるか
  • 社員の発見力を高めているか
  • 経営層はイノベーションを起こすために,果敢なチャレンジと失敗が必要であるコトを認識しているか

おわりに

イノベーションを成功させたいなら,誰かがアイデアを思いついたときに,第一歩を早く踏み出せる方が間違いなく良い.もちろん実際はコストの問題があるので,ある程度の枝刈りは必要なのは事実だけど,刈りすぎて枯れてしまっては元も子もない.