経産省主催の,イノベーション経営のためのデザイン思考に出席してきました.大手町サンケイプラザというビジネス街の一等地で開催されたイベントで,200名ぐらいの参加者がきていました.その中から,今日はドワンゴの役員である夏野さんの基調講演の講演メモを共有いたします.
サービス開発の秘訣 – 夏野氏
ITによってかなり世の中が変化したことは間違い無い.その変化によって,トータルデザインというものが,21世紀において超重要にしている.しかし,それをないがしろにしてきたこそ,今製造業が日本の出遅れてしまっている.余談だが,その企業がトータルデザインを理解できているかを見るには,その企業の偉い人が着ている服を見れば分かる(笑.
この15年で起こったITによる変革によって,世の中の全てが変わった.例えば,自前で持ってなくても,モノが作れる時代になったしね.たとえばAppleは自社工場をもっていないのに,世界で一番スマートフォンを売り上げた企業になった.必要なら買うか,借りてくればいい時代になった.
今日はそんな時代になった理由,とくにITによって起こされた,3つの革命についてお話しする.
第一の革命「効率革命」
ビジネスフロントラインがネットへなった.リアル+ネット市場となり,顧客接点の大変貌を遂げた.人が少なくても,数人いれば大きな仕事ができるようになってきている.例えば航空機のチケットなんて,ほとんどがネットで売り上げるようになってきている.ものすごい効率化が起きた.
しかし,効率革命が起きたにも関わらず,20世紀の組織デザインのままの大企業は多い.係長,課長,部長,大部長と,とても煩雑な組織体制になったままでは非常に非効率である.そんな状況で勝てるわけがない.
第二の革命「検索革命」
個人の情報収集力が飛躍的に拡大した.また,研究開発プロセスの革命が起きている.例えば,ネットで検索すればあらゆる専門文書が手に入るようになった.NTT研究所にいないと最新の論文が読めない,そんな時代は終わった.学会にでなくてもネット上で有名になることだってある.
組織力を最大化するために,個人の力を抑える時代は終わった.興味があれば,個人でも情報を確実に手に入れることができるし,活躍できる.なお,情報だけでなく,専門家すらも検索して見つけて,調達できてしまう.こういった時代において重要なのは組織をマネジメントする人というよりも,迅速な意思決定ができるリーダ,リーダがちゃんと意思決定できるか.それが根本的に重要なところになってきている.
第三の革命「ソーシャル革命」
個人の情報発信能力の飛躍的に拡大拡大した.TwitterやFBによる「共振」が起こるようになっている.20年前の右肩上がりの経済だったころは,単調増していく社会に対応するために,人を増やして,いかに効率良く組織をマネジメントするか,ということが重要だった.しかし,経済成長しない世界では,いくら効率良くしても全体経済の成長以上にはならない.効率+付加価値をつけないといけない.
要するにイノベーションが必要.イノベーションとは,付加価値を付けること,今までに無いことをやること.今までにないことをやるには,20年前の組織体制じゃ上手くいかない.ある意味,今の組織体制は,同じことを継続的に効率良くやる,という意味では間違いではない.しかし,今は変化なくしては生き残れない.
なので,一人一人の従業員の気付き,それが全ての始まり.技術,文明や食文化,カイゼンも含めて,個人が最初に気付いたものを,共有し,伝承したからこそ,ヒトは進化してきた.結局,イノベーションは組織からは生まれない,個人からしかイノベーションは生まれない.だからこそ,イノベーションを起こすには,多様な個を集めてくることが必要.そして摩擦を生み出して,議論させることが大事.右向け右の組織では上手くいかない.
みんなが良いと思ったら,イノベーションじゃない.右向け右の輪の中(アコモデーション)から,イノベーションを生み出そうとしてるのはおかしい.
サービス開発の秘訣とは?
時代は変わった.そして3つの革命によって,イノベーションの重要性が大きく増したことを認識しないといけない.そして,それに合わせて組織や社会のデザインを見直すことが大事である.
イノベーションによって付加価値を創出する,といってもそんな小難しいことではない.こんなことができたらいいのに,なんでここまでできてないのだろう?という素朴な疑問を解決するだけでも,十分な付加価値になる.
ちなみに,マーケティングはやりすぎない方が良い.最近は1ヶ月も立つと状況が変わってしまうし,ユーザニーズに合わせすぎると感動は生まれない.技術,制度,社風,経営陣の理解などの限界を忘れて,ふつーに考えたらこうあるべきを整理し,その上で,現実問題どこまでできるか考えることが大事.そして,妥協したところは全部覚えておいて,妥協が魅力を失わせてないかを常に意識する.
それと,サービスを提案するときは勝てるケンカをすること.勝つには,自分が確信できる(主観),理屈にかなっている(客観),会社(社会)のためになる(目標)の三条件にかなっているのが大事.それ以外のアイデアはさっさと撤退する.勝てないケンカばかりしていると干されちゃうので.
最後に,やるからには魂を込めること.やはり,個人の信念,魂,意思をどれだけ込められるかで商品力は変わる.芸術と同じ.熱意は必須.そのために,自分の思考,嗜好,志向のクセを理解しておく.ヘンなところを理解しておくと良い.
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