フィールドワークをすることで、実際にユーザがいる現場に出向いて、ユーザがどのような状況で、どのように行動し、目的を達成しているかを観察することで新たな発見を得ることができる。とはいえ、ウェブで大量の情報が収集できる現代において、なぜわざわざフィールドワークをするのだろうか?その理由について述べる。

まず始めに、フィールドワークと対になる統計調査について。統計調査はウェブなどを通じてアンケートなどの形で大量に回答を収集し、統計処理をすることで量的に特徴を見出す手法である。これにより、ターゲットとする層(男性、40代、パソコン好き、など)の大ざっぱな特徴について知ることができる。

しかし、全ての回答は基本的にユーザの意識的な回答であり、かつ質問項目も予め実施者側が定めたものである。さらに統計的に処理されるので、特徴的な回答をした人は「ハズレ値」として扱われる。よって既にある「仮説」をある程度検証するためには有効なのだが、まだ見ぬ「仮説」を見つけたり、まだユーザが気付いていないニーズを発見することは難しい。

そこでフィールドワークをして、実際のユーザをつぶさに観察することが必要になる。結果として得られた一次情報を主観的に、質的に分析することで、統計情報では見ることができない、極めて特徴的な部分を見出す。それらに対して新しい仮説を立てて検証するのだけど、まだ無いものをアンケート調査などで検証することは難しいので、プロトタイピングなどをしてユーザにフィードバックをもらい、人々に受け入れられるかも質的に検証していくことが求められる。

一歩も動かずに大量のデータを収集、分析できる時代になって便利になったけども、だからといって足を使って特徴的なデータを集めてくることが重要であることは変わらない。そう考えると、今度は上手く量的なデータと質的なデータを組み合わせる手法が出てくることを期待したいものである。