たまたま英語が得意ではない日本人(と一人の外国人)が9人集まって、英語でブレインストーミングをする機会を得た。いかに議論において言語が重要なのか、ということが非常によく分かった体験だったので少し紹介したい。テーマは「いかに素早く遊びに行く場所を決めるか  (How might we be able to make a quick decision on a place to play?)」というもので、10分間で実施した。

壁1:連想が減る

出てきたアイデアは必ずしも直接的に”quick”であるとはいえないものも含まれていて、どのようにして決めるか、どのような観点で決めるかといったものが出てきた。ブレスト中は比較的英語を話せる人が主導しながらも、英語が苦手な人でもアイデアが出せていた。とはいえ、人数が多いのでアイデアの数こそ多かったものの、日本語で実施したときよりも連想が少ない印象を受けた。

壁2:グルーピングが上手くいかない

次に、ブレインストーミングで出たアイデアをまとめるために、アイデアのグルーピングをすることにした。この過程では、書き出されたアイデアの意味を確認する必要があったため、英語の能力の差が如実にでてしまい、英語を話せる人が実質的に意図を勝手に解釈してグルーピングしていく体勢になった。そのため、いくつかのグループを作成することはできたものの、一部のメンバの意思によって大分歪められたものになった。

壁3:ラベルを上手く付けられない

作成したグループのラベリングに非常に時間がかかってしまった。というのも、ユニークなラベルを付けようとするがなかなか良いラベルが作成できないのである。単語レベルではラベルの案が出てくるものの、キャッチーなラベルにするのは非常に困難であった。途中から”〜〜preference”という安易な単語でラベルをつけていったが、英語力の差もあって合意形成が十分にできず、何度もラベルが書きかえられ、さらにそれに伴いリグルーピングされていった。

壁3:グループ同士の構造を捉えられない

最後に、リグルーピングが落ち着いた後に構造化を試みた。しかし、どのようにまとめればよいかで長時間の議論が巻き起こった。私的に対立・包含などの関係性を描いたらどうかと主張したが、英語でやり方を説明することは難しく、なかなか受け容れられなかった。これは、他の参加メンバが構造化に不慣れであったことも影響していたが、やはり言語の壁の方が大きかった。

さらに、構造化を試みている最中にもグルーピングについても再度議論になり、ラベルの意味などを何度も確認するようになっていた。この時点では、ほとんど日本語で議論していて、全員が参加できる状態になっていた。日本語で20分ほど議論した結果、ラベルやグルーピングがさらに修正されながら徐々に構造化することができた。日本語で議論したことでずれていた認識が埋まり、建設的に議論できるようになっていく様子は、まるでバベルの塔の物語を逆再生で見ているかのようだった。

壁=つまずきポイント

今回、言語の壁によって上手く行かなかったポイントは、日本語で議論してもつまずきやすいポイントである。具体的には、議論慣れしてる人が勝手に合意形成してグルーピングしたり、安直に面白くないラベルを付けてしまったりなどが挙げられる。また、合意形成が弱いまま議論を進めたせいで、後々「そもそも論」が発生してしまい、結局手戻りして余計に時間が掛かったりすることは、皆さんも体験したことがあるだろう。

今回の英語ブレストは、上記ポイントをきっちり抑えることがいかに重要かを再認識する良いきっかけにできた。このように、あえて慣れない言語やツールを使って慣れていることをやってみると、新しい気づきを得られる。皆さんも一度試してみてはいかがだろうか。