とある人の紹介で、思考脳力の作り方という本を読んだ。思いの外考えさせられる内容だったので軽く内容を紹介したい。
本書では、要素還元思考、システム思考、ポスト・システム思考、システム思想という、4つの思考法を紹介しており、それぞれが一見すると矛盾するような関係性を持っているが、よく見ると全てが深く関係しており、それらを上手く使い分けることで、大局的思考と局所最適な思考を状況に応じて上手く組み合わせることが可能であることを述べている。
第一に、要素還元思考は、要素を追求したり、発見したり、原因を突き止めることを目的とした思考法である。つまり、大局的に見て関係性がどうとか、依存関係がどうかは特に見ず、ある個別要素がどのように動き、成り立っているのかを突き止めることを目的とする。そのため、要素に分解・解明することはあっても、それらを組み直して新たなシステムを構築するなどはしない。
第二に、システム思考は、ある範囲における要素同士の関係性や依存関係などを鑑みながら、多目的最適化をするために、システムを俯瞰的・客観的に見ることを目指す。解くべき課題を一度要素に分解し、分析はするものの最終的に統合する。ロジカルシンキングと呼ばれるのはこの段階である。
第三に、ポスト・システム思考とは、ある一定以上の範囲においては関係性が複雑すぎて最適解が求められないことを理解した上で、人々がアコモデーション(妥結、納得)できる解を導くことを目指す。システム思考で課題がすっきり解けるのはあくまで限られた、簡単化されたモデルの中だけであって、実世界はモデル化できるほどに単純ではないのである、というスタンスにたった思考である。
第四に、システム思想とはもはや解を導くか否かを議論することすらせず、現状を受け容れ、利己と利他の境界を超越すること。つまり解を導く議論自体が不毛であることを理解した上で、全てを受け容れて楽しむという思想。ゆえに、状況に応じて第一〜第三フェーズを上手く切り替えながら使いこなすことが可能となる。
人事を尽くして天命を待つという諺があるが、これらのフェーズを使い分けるということは、この諺に近いような気がする。自分ができることさえやりきれば、あとは野となれ山となれ、それは受け容れるべきことであって、その結果を憂う必要は無い。むしろ自分ができることをやりきったのかさえも憂う必要は無いのだろう。
大局的に見れば、人の世において、何においても必ず正しいということはない。それゆえに、堂々とただそこに在ることを楽しめばよいと思う。それを理解した上で、自分が見える範囲で要素を追求したり、システムの最適化を目指したり、他者とアコモデーションしたりすることもまた楽しめるとすれば、それはなんと贅沢な人生だろうか。
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