開発は,モバイルファースト(アプリベース)でやるべきか,ウェブベースでやるべきかという議論がなされている.しかし,筆者さんも書いていらっしゃるが,大事なことは,ユーザに何を使ってもらうか,ではなく,ユーザが何を使って何をしたいのかをきちんと知ることである.
昔はみんな同じような使い方をしていた
Facebookが生み出された当時,ほとんどのユーザはPCのウェブブラウザでインターネットを楽しんでおり,他にインターネットを使える手立ては無かったに等しい.どちらかと言えば,ネイティブアプリにするか,ウェブアプリにするかで悩む時代だった.とはいえ,ネイティブにしてもウェブにしても,ユーザ層は大体同じだし,スクリーンサイズや操作方法も同じなので,そんなに悩まずにインタラクションフレームワーク(操作の流れ)を設計することができた.
今はみんな違う使い方をしている
今は時代が変わって,多くの人がインターネットをPCではなく,モバイルで楽しむようになったし,タブレットやスマートテレビなどと種々のデバイスでも,インターネットを閲覧できる.それに伴って,インターネットのユーザ層が拡大し続けており,インタラクションフレームワークがユーザ層によって全然違う,ということになってきた.
そのため,単純なマスマーケティング的なやり方ではユーザが獲得できなくなってきている.なので,ユーザ行動を詳しく分析をすることがユーザの獲得において重要になってきた.そういった流れの中で,アプリベースか,ウェブベースなのか,はたまたAPIベースなのかという論調が生まれてきている.
デバイス → ユーザファースト
このような文脈の場合,何ベースが最適かという議論はあまり意味を成さない.なぜならば,あるサービスにとってはウェブアプリが一番であり,ネイティブアプリが一番であり,APIベースアプリが一番であったりするから.
例えば,EvernoteやDropboxはモバイルで使えることも大事だけど,それ以前に,母艦となるPC用のアプリがなければ最大限に効果を発揮することは難しい.対して,カレンダーやToDoサービスなどは,APIベースでどんなサービスとでも連携できる方が嬉しいかもしれない.また,Twitterなどの,気軽に情報を発信するようなサービスは,モバイルアプリで開発するのが一番だろう.
この動画でもっとも注目したいのは,ウェブ vs. アプリの議論と並行して「いかにユーザデータを取得し,デザインを最適化することが重要か」を伝えている点である.たとえば,動画の中で「ユーザに最適化するためのデータがアプリでは取りにくい」という発言があって,本質を掴んでることがわかる.しかしながら,ユーザのデータがとれるからウェブベース(モバイルファースト)で…というのは,目的と手段が逆転してしまっているようにも見える.
ユーザファーストなら現場を見よう
ユーザの行動は,遠隔で取得するだけでなく,エスノグラフィなどで現場調査をすることでユーザをさらに深く知ることができる.やはり,直接使っているユーザを見た方が,より多くの情報が得られる.手間は掛かるものの,実ユーザの観察によって得られる情報は,開発にとって非常に役立つので,ぜひ挑戦して欲しい.
エスノグラフィー入門 <現場>を質的研究する
著者:小田博志
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