イノベーティブになるための情報が大量に提供されているのに、人々がイノベーティブになれないのは、環境が大きな阻害要因になっていることが多い。
「イノベーションのジレンマ」という理論がある。これは、一世を風靡した企業が、持続的イノベーションのみに傾倒することで、破壊的イノベーションができなくなり、後々、別会社に市場を奪われるというものである。
例えば、HDDを考えるとわかりやすい。HDDの容量を増やしていくことは、持続的なイノベーションである。一方で破壊的イノベーションは,フラッシュメモリなどである。同じ「保存する」という大目的のために開発されているが、容量や特性が異なり、もちろん用途も違う。
HDDは有効活用されているが、SSDによってノートパソコンの市場を取られている。おそらく将来、HDDのシェアをSSDが取ることになるだろう。これこそが、持続的イノベーションが破壊的イノベーションに席巻される例である。
多くの企業は破壊的イノベーションで一度成功すると、そのイノベーションの持続に組織が最適化され、破壊的イノベーションを起こしにくい体制になる。第一に、持続的なイノベーションの市場規模が大きいがゆえに、破壊的イノベーションの市場規模が非常に小さく映ってしまい、合理的な経営判断によってイノベーションの芽が摘み取られる。第二に,プロセス化されたことで効率が上がる一方で、組織に弾力がなくなり、発出するアイデアが部分最適解に陥りやすくなる。これらにより、破壊的なイノベーションに達することができなくなる。
破壊的イノベーションが日々潰されている。これは人材の問題ではなく組織の問題であるから、いくら理屈がわかる人材を育成しても無駄なのである。人材を育成するとともに、イノベーティブさを発揮できる環境と評価基準を用意しなければならない。
多くの管理職は持続的イノベーションの判断基準のままで、合理的に破壊的イノベーションを評価する。だからこそ、人材がイノベーティブなアイディアを出しても潰されるのである。そのことを棚に上げて、なぜうちでは、アップルのようなイノベーションが生み出せないのかなどと、嘆いている管理職は多いのでは無いだろうか。
そんな管理職を見つけた際には、「イノベーションのジレンマ」をそっと置いてあげると良いだろう。
イノベーションのジレンマ
著者クレイトン・クリステンセン
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