最近「LINE」ユーザーが1億人を突破したとのこと。LINEがここまで素早くユーザを獲得できたのは、サーバへのアドレス帳送信機能という諸刃の剣の存在が大きい。

「LINE」ユーザーが1億人突破

LINEはふつうのアプリ

もちろん、LINEはシンプルで基本的な使いやすさが良いこと、送信したメッセージが読まれたかを確認する機能や、今やLINEの主たる収入源となったスタンプ機能など、魅力的な要素がいくつか含まれている。しかし、実をいうとそれらの機能の多くは、既存のメッセンジャーアプリで満たされている機能であって、ここまでの爆発的な利用者の増加を実現できるほどのものではない。

アドレス帳共有という武器

では、なぜここまで急速にユーザを増やすことができたのだろうか。それは、LINEは自動的にケータイに入っているアドレス帳(電話番号)をサーバにアップロードすることで、他の友人を捜す機能を備えたからである。これにより、LINEをインストールするだけで、面倒なID検索や登録が必要なくなる。しかも、既に友人が自分の番号をサーバにアップロードしていれば、友人が自分のLINE上に表れ、逆に自分の情報も相手に通知される。これにより、既存のアプリより、はるかに気軽に交流を始めることができるようになった。

アドレス帳共有は諸刃の剣

このようなアドレス帳送信機能は、最近になってGoogleやFacebookも露骨にやってはいるが、携帯通信事業者は手を出さなかった部分なのである。なぜならば、通信事業者の基準からすれば、個人情報の流出に他ならないからである。もし、自分の電話番号を知っている友人が情報の共有を許可したら、自分の意志に関わらず自分の電話番号がサーバ上にアップロードされるし、複数人がアップロードすれば、自分が許可したか関係なく、ソーシャルグラフも作れてしまう。実際にいくつかのトラブルが起こっているが、現状、それはユーザの対応で防ぐしかない。

このような美味しいが、限りなく黒に近いグレーゾーンを攻められるのは、小さな企業ならではである。もしも通信事業会社がこのようなサービスを提案しても、すぐにボツになるだろう。また、万が一提供できたとしても、セキュリティ関係や個人情報保護の観点から袋だたきになるだけである。

ユーザを危険から守ることも大事

サービサーにとって、ユーザの利便性や優れた体験を提供することは至上命題ではあるものの、見えないところでユーザに綱渡りをさせたり、危険にさせるようなことは避けなければならない。そうしなければ、焼畑農業と同じように土地(市場)がやせ細り、最終的には商売が成り立たなくなってしまう。

たとえば、他にもソーシャルゲーム市場など、焼畑で成り立っている市場も散見される。サービサーには市場だけでなく、ヒトをしっかり見てサービスの開発を頑張って欲しい。