裁判が終わり、薬のインターネット販売は合法ということになり、また便利に薬が買えるようになったと思った矢先、再び薬のネット販売が禁止されようとしているという記事を読んだ。ネット販売を禁止することによって、誰が嬉しいのだろうか?

薬のネット販売が再禁止されるらしい 〜自由と責任について〜 : アゴラ – ライブドアブログ

ネット販売の信頼性は向上している

ネット販売はもともとは信頼性が低いと言われてきたが、インターネットが一般に普及し、販売の仕組みが整備されることによって、信頼性の低い業者は淘汰されるようになっている。そのため、最近では本や家電製品などに限らず、日用品、水などの食品すらもインターネットで購入する人が増えてきている。

しかし、薬というものは副作用が出るなどの危険性から、薬剤師がいるお店での対面販売を義務づける法律ができ、インターネット販売ができなくなってしまった。とはいえ、対面販売したとしても、その薬を本人が使うかもわからないという問題と、逆にインターネットでも購入前に説明書きを出して読ませてから購入させれば十分注意喚起できるなど、対面販売の必然性のロジックが破綻していたため、ケンコーコムなどの販売会社が裁判を起こして勝訴した。しかし、それがまた禁止されようとしている。

最高裁 国の規制は無効・薬のネット販売認める NHKニュース

ネット販売に反対せざる得ない人がいる

禁止を要請する背景には、購入者の安全問題ではなく、単に昔から対面販売で薬を売ってきた団体の利権を守るために、インターネット販売をさせたくない、という事情がある。インターネットによる販売が主流になると、現在の薬局のビジネスモデルが破壊され、顧客と製造元との間にある販売マージンが減少してしまうため、現行のビジネスモデルに乗っている人々は、モデルを崩せないがゆえにインターネット販売に何か理由を付けて反対するしかないのである。

購入者からすれば、不安であれば薬局で薬剤師の指示を受けて購入すればよいし、いつも買ってる薬を買い直したいならインターネットで買う、といった選択肢がある方が良い。例えば、地方で外出が難しい高齢者(販売サイトの分かりやすさなどの問題はあるが)などにはありがたいことだろう。もちろん、インターネット販売によって、購入者にデメリットが発生する可能性も確かにあるが、それは国が法律によって縛らなければならないほど重大か、といわれると疑問である。

時代の変化に合わせることが大事

世の中には、時代遅れの利権を守ろうとすることによって、ユーザビリティを大きく損ねている事象が散見される。確かに、開発者などの権利を守り、彼らの功績を正しく評価し、彼らが評価に見合う利益を与え、モチベートすることが重要なことは言うまでもない。しかし、その権利にたかる虎の威を借る狐の権利まで守る必要はない。