最近、ニュースのバラエティー化が激しい。どのチャンネルを見ても綺麗なアナウンサーがニュースを読み上げ、ジャンルの多くは芸能である。また、殺人事件などの痛ましい事件の報道も、まるでノンフィクションドラマを見ているかのようだ。そういったニュースが人気を博している。一方で、シンプルに短時間で遊べるソーシャルゲームが流行している。ゲームとしては、集めたカードを使って簡単な操作を繰り返してボスを倒すといったようなゲームが多い。つまるところ、ボタンをタイミング良く連打していれば気軽に楽しめるゲームである。

このような簡単化が進む理由として、世の中に在る情報が増えたことが挙げられる。現代において、人は無意識にとてつもない情報の波にさらされている。そのため多くの人々は情報過多に陥っており、より楽に情報を得られる手段を好む傾向が強くなっている。

逆に、情報が増えたことに伴って別の情報取得の手段を選ぶこともできるようになった。例えばハイエンドユーザはインターネットのRSSやキュレーションサービスなどを活用している。それらのユーザは、TVのように限られた時間でブロードキャストされる密度の低い情報取得手段から離れた。同様に、ハイエンドなゲームユーザは高度なPS3やPCゲームを楽しむようになり、それらに興味がない多くの人達はより簡単で気軽に遊べるゲームに流れていった。

これにより、ニュース番組を見るユーザ層には、質や密度が高いよりも、感情に訴えかけるようなニュースを好むユーザが残ったため、ニュースをバラエティー化をした方がユーザを捉えやすい状況になった。また、ソーシャルゲームに関しても、ハイエンドユーザを狙った小難しいものよりも、あまり考えずに気軽にできるゲームの方がより広いユーザ層を狙えるようになった。

言い換えれば、情報が増えて、取得する情報を自由に選択できるようになったことで、逆に、良質な情報が得られるかどうかがユーザ次第になってしまったとも言える。だからこそ、TVやゲームなどのサービス提供者には、ユーザが見てくれる魅力的なコンテンツ作りをするということに加えて、いかに情報の密度や質を維持するかということもよく考えて欲しい。ユーザが望むものを提供することは重要なことだが、提供している価値がどのような影響を与えるのかを考えることもまた重要である。