インターネット（ネット）依存症が深刻化しているという．ネット依存症になるのは本人の気質だろうか？そんなことはなく，ネット依存症は親の何気ない都合や要求が大きく影響しているといえる．
私自身も家庭用ゲームやオンラインゲームなどに相当熱中した経験があるゲーマーであるが，今もネット依存症になることもなく適度にネットを楽しんでいる．端的に言ってしまえば，ゲーム以上に興味を持てる対象，話したいと思える対象があれば，ゲームやネットだけに依存することはなくなる．さて，子供にその対象を与えられるのは誰だろうか？それは，まず誰よりも親なのである．
私はとある仕事で，ある母子のイベントを見学する機会を得たのだが，そのときに，テレビをじーっと見続ける子供と，疲れたような顔をした母親とがイベントに参加しているのを見つけた．少し話を聞いてみると，どうやら母親は子供にテレビを見せていると子供が静かになることを良いことに，何かにつけて子供にテレビを見させている内に，自分の家事などをこなす習慣があるという．
そのため，その子は誰かと接触したり会話する機会が非常に少なくなっていた．その結果，イベント会場には他の子供もいるのに興味を示すこともなく，ひたすらにテレビを見るのである．さらに悲しいことに，その子におもちゃを与えると，おもちゃで遊ぶこともなく，おもちゃが取られないようにただひたすらに守るだけなのである．つまり，他の子供とおもちゃで遊ぶという概念を獲得していないため，他者に取りあげられることだけを恐れていたのである．
このように，親の些細な都合や要求によって子供は学習する機会を失っていく．この積み重ねが，ネットやゲームだけに熱中する子供を生み出す大きな要因の一つなのではないかと感じている．しかし，親自身はこの原因に気がついていないように思う．これは，ネット依存症に限らない話である．一般的に見て，モンスターペアレンツのような人達は，他者に様々な責任をなすりつける傾向がとても強く，自分にある責任の可能性を疑わないことが多い．しかし，子供の成長にとって重要なことは環境整備を他者に期待することよりも，まず親自身が最も子供に影響を与える存在なのだということを，強く自覚することである．
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