とあるフリーランスの方が言うには,会社員が恵まれているという.しかし,誰にとってなのかを考えなければ,会社員が恵まれているかどうかは測れない.

会社員はこんなにも恵まれている 誠 Biz.ID

私は会社員でもあるわけだが,個人的な感覚として,今の職場には不満もあるが私にとっては恵まれた環境であると感じている.しかし,この記事の基準で考えて「恵まれている」のかと問われると,そうとは答えられない.

例えば,「仕事があること」は悪いことではないが,一方で,自分の興味がない仕事を延々とやらされるということは,多くの人に対してめぐまれたこととは言えない.望まない仕事のせいで,心を病んで自殺する人すらいる.しかし,たとえ病んででも仕事をすればお金はもらえるので,お金をもらうことが生き甲斐だという人にとっては,めぐまれたことと言えるのかもしれない.

次に,「常に学べる環境」は大企業であればある程度整っていて,それはめぐまれているように見える.しかし,学ぶと言っても,その会社でしか使えないスキルを学んでいる人だとしたら,それは悲劇である.国際社会でも通じるような資格や技能を習得できるのなら誉れだが,一方で会社独特のルールや技術を学ぶことを強いられる会社にいると,人は飼い殺され,気づいた時には転職すらできない人材に「育ってしまう」.そういった人達は,最終的にフリーランスになる選択肢すら残されずに,早期退職におびえながら必死で会社にしがみつくことになる.

また,会社員を続けたまま,空いた時間にチャレンジしたり,他の活動場所を作るということには私も賛成する.今の時代であれば,会社に反抗することに労力を割くより(例えば労組活動を頑張るなどより)も,自分自身で別の道を模索した方が効率が良いし,成功する確率も高いことは確かである.とはいえ,平日に深夜まで働かされて,とても休日に頑張れる状態ではない会社員の友人を見ると,なぜ休日を無駄に過ごすのか,チャレンジしろと激励する気にはなれない.

以上の通り,会社員が本当に恵まれているかは,どのような状況でどのような人が会社員をやっているのかで異なるのである.もちろん,フリーランスでも同様に,どんな状況が恵まれているかは人によって異なる.

そのため,恵まれた環境を得やすくするために,選べる選択肢を常に複数持てることが重要である.具体的には,会社員を続けるとしても,フリーランスになっても働けるような,自分の競争性とは何なのかを常に見つめて,それを伸ばすことをおすすめする.そういったことが今の会社でできないのであれば,本当に動けなくなる前に飛び出す準備をした方が良い.

取引において,取引に使えるカードがなければ,相手の言い値に従うしかない,というのは明白なことだが,それは自分自身の売買であっても同じことが言えるのである.