カイゼンのためにルールだけ作って仕組みをデザインしない例が多すぎます.最近ですと,セキュリティなどの問題がよく騒がれるようになったり,働き過ぎについても警鐘がならされるようになり,これらに対応するために各社でカイゼンのルールが沢山作られました.

日に日に増えるルールと守られない現実

このような流れから,パソコンなどIT機器の管理が厳しくなったり,誰がどこで.何時から何時まで働いていたかをしっかりとチェックするなど,様々な管理ルールが追加されています.理想的には,これらの取り組みによって適切な勤務管理ができ,また従業員もリスクを取らなくてよくなるはずです.

しかし,少し引いて考えてみると,そもそも従業員は,なぜセキュリティリスクがあることを知りながらリスクをおかすのでしょうか?また場所や時間を問わず働いてしまうのでしょうか?その答えは簡単で,今の環境がそうせざる得ないデザインになっているからです.

例えば,今の時代,出張が多い人だとIT機器を持ち歩かずに仕事をすることはできません.また,移動中という隙間時間を使って仕事を進める人も少なくありません.よってパソコンやスマホという,モバイルワークスペースが必要なのはいうまでもありません.従って,それらのIT機器を気軽に,かつセキュアに持ち出せることは業務効率をよくするために必要不可欠であることはいうまでもありません.

守られないルールはなぜ増えるのだろうか

しかし,今ルールを作っている人達は,20年前のゆったりした時代で生きてきました.そのため,彼らにとってはルールを厳格にして効率が落ちても大丈夫だと思ってしまうのです.残念ながら,今はそんなに悠長な時代ではありません.世界はネットワークで繋がって24時間,場所を問わず凄まじい速度で世界は動いています.そのような効率化された世界で,資料を印刷して,それでプレゼンして,結果を持ち帰って意思決定をする,なんて悠長なことをしていたら乗り遅れてしまいます.

だからこそ,現場はリスクがあることを承知でパソコンに情報を入れて持ち歩いたり,移動中に仕事をしたりするのです.今の世の中が,そのような効率を求めるデザインになっているのです.それを無視してルールだけを押し付けてしまうと,従業員のモチベーションは低下し,成果も上がらず,コストも増大します.

ルールから逃げられない現場が悲鳴をあげる

ほとんどのルールは現場にきたこともない管理者が,彼らの経験だけでルールを作ります.そのような管理者の都合だけで作られたルールが機能することは稀です.しかし,多くの企業ではいまだにそういったルールが当たり前のようにはびこっています.そして,日に日にルールが増え,チェック手順が増え,プロセスは複雑になり,稼働は爆発します.

手遅れになったときには,ルールを作った管理者はすでに異動し,ルールが作られた理由もよくわからないままになりますが,ルールが消えることはありません.だれもルールを削るリスクを負いたくないからです.その結果,本来すべき業務がどんどん圧迫されます.このようなルールの単調増加は,意思決定プロセスが遅くなったり,成果のアウトプットが遅くなるなどの,大企業病を引き起こします.

最も不幸なのは,守ることが困難なルールをなぜ守れないのかと怒られるのは,その理不尽なルールを押し付けられた実働部隊です.実働部隊は必死にルールを守りますが守りきれないですし,非効率で成果も出なくなるので,成果がでないことも怒られます.前にも後ろにも逃げ場はありませんので,日に日に従業員は疲弊していくことになります.

適切なルールのデザインすることは管理職の仕事

ルールを作ること自体は,決して悪いことではありません.しかし,ルールを作るのであれば,そのルールが自然と守られるような仕組みのデザインもまた必要なのです.重要なのは全ての穴を塞ぐことではなく,穴に落ちないルートを自然と歩めるようにすることなのです.

そのようなルールをデザインできるのは中間管理職です.しかし,上の指示を下に丸投げし,下の報告を上に丸投げすることしかしないような中間管理職が多いのが現状です.こういった人が増殖してしまうのも,デザインを考えず研修プログラムだけ入れておけばなんとかなると思っている別の管理職の問題といえます.

中間管理職が機能していない会社は長持ちしません.そんな会社独特のルールを守るためのスキルを身につける前に,会社に依存しないスキルを身につけて行くことを強くオススメします.